ドープルーンの宿屋でのことだった。
その部屋の一室に、カノンノはベッドに寝そべっていた。
ハロルドを救出した後、彼女は記憶を取り戻すことを決意した。
だが、「本当の自分」が何なのかはカノンノは知らない。それが、彼女にとっては恐怖だった。
そして、ハロルドに一日だけ待って。と、申し出たのだった。
本当の自分は何なのか?誰なのか?
そのことを考えると、体が震えるのをカノンノは感じた。

「こ、わい…」
どうしようもなく、怖かった。
そして、ぽつり、と呟く…
「怖いよ……」
自分と同じ点訳ではないようだが、記憶を持たない彼のことを、思い浮かべる。
彼に少し無理を言ってカノンノは、旅についてきている。
それも全て、故郷を探すためだ。
だが、せっかく記憶が戻るかもしれないというのに、思い浮かぶのはのことばかりだった。
カノンノは気付いていた。
記憶が戻り、もしも悪人だったら、はどう思うだろうか…
…」
カノンノは、ベッドから起き上がった。


「うぅ〜ん、もう食べらんない…。」
モルモが、小さい体で贅沢にもベットを占領して、至極幸せそうな顔で寝ているのを見て、は苦笑した。
だが、その表情はすぐに曇った。
言わずもがな、カノンノの記憶の事だ。
は、カノンノの記憶が戻るのが、少し怖かった。
カノンノ、記憶が戻ったら、自分のことを忘れてしまわないだろうか…
最近読んだある本の内容が、なぜかは鮮明に思い出せた。

『記憶障害の患者が、記憶を取り戻したら、記憶を失っている間のことは全て忘れていることがある。また、まったくの別人になってしまう可能性が高い。』

は、頭をがしがしと掻いた。
(カノンノは、記憶を取り戻して、前を向こうとしてるのに、は…。)
記憶を取り戻さないで欲しい。
そう思っている自分に、は嫌気がした。
(がグタグタ悩んでても仕方ない、よな。)
は、部屋のノブに手をかけ、モルモを起こさないよう、極力音を立てないように、部屋を出た。



「「あ。」」

と、カノンノの声が見事にハモったのは、カノンノのが、部屋のドアを開けた瞬間だった。

「…眠れないのか?」
「うん…。」
カノンノは、小さく頷き、の顔をまっすぐに見据えた。
「カノンノ?」
は首をかしげる。
少し、面を食らったからだ。
「あのね、…」
「ん?」
「少し、私の部屋でお話しない?」



「あ、そこ、座って。」
カノンノは、申し訳程度に備え付けられている椅子にを促した。
そして、立ったまま、カノンノはぽつりぽつり、と話し始める。
「あのね、…」
「なんだ?」
「記憶が戻るのが怖い、なんて…私、情けないよね。」
「…!」
カノンノは俯き、続ける。
「情け、ないよ…自分から望んだのに、私、私…」
「カノンノ…」
カノンノの声が少し震えていることに、は気付き、立ち上がって、そっと彼女の頬に手を伸ばした。
「カノンノ、それは…」
彼女の頬をやさしく撫でたとき、の手に暖かいものが触れた。
…涙だ。
「…怖いの!」
カノンノは、の胸に抱きつき、彼の胸を涙で濡らす。
「私、記憶が戻って、あなたに嫌われたらどうしようって!そんなことばっかり考えてるの! 」
「カノンノ…」
「やだ…やだよ…!」
「カノンノ!」
少し強くが言うと、カノンノは少し肩をびくりとさせた。
…」
が…カノンノを嫌いになるわけ、無い。」
は、言い切る。
「でも…!」
「本当のカノンノが、どんなヤツでも…は…」


「カノンノのこと、好きだ。」
は、カノンノの頭を、強く抱いた。
「好きだ、カノンノ…」
……私も、私もあなたが…」
二人は、触れるだけの口付けを、そっと交わした。
離れた唇を、カノンノは手で触れる…。
頬はこれ以上ないくらい紅潮していて、そのままカノンノは、ばたりとベッドの方に後ろからとともに倒れこんだ。
「か、カノンノ?!」
は慌ててカノンノから離れようとする。
だが、カノンノは、しっかりと彼の背に手を回して話さない。
「お願い…」
「え?」
「あなたを、私ずっと覚えていたい…。」
「…うん。」
「記憶が戻っても、ずっと、ずっと…」
また一筋、彼女の頬に涙が流れた。
「私を…だけのものに、して…」

は、カノンノの口に、今度は長いキスをした。
返事の、代わりに。


…」
「うん?」
「脱いだから、こっち…向いていいよ。」
恥ずかしいから、服は自分で脱ぐね、と言ったカノンノ下着だけの姿になったのは、長いキスから数分後…
ぺたん、とベッドの上に女の子座りで座って、カノンノは上目遣いで彼を見た。
彼女の体は、思ったよりずっと華奢で、触ると粉砂糖のように砕けてしまいそうなはかなさを持っていた。
(綺麗だ…)
は、彼女の上に、軽く馬乗りになるように覆いかぶさると、細い首に舌を這わした。
「ん…」
カノンノは、声を出してしまい、赤面する。
は、それがどうしようもなく可愛く、愛しく思い、そのままあまり大きくない胸にブラジャーの上から手を乗せた。
そのまま下から持ち上げるように揉みしだくと、びくびくと体をさせるカノンノを尻目に、そのままブラジャーの中に手を突っ込み、赤く充血した突起に触れた。
「カノンノ、可愛い…」
ッ…」
くりくりと、指の腹でこね回すと、カノンノから荒い息が漏れた。
「は、ぁあ…」
貧乳は感度がいいというのは本当だったか。
誤って買ってしまった官能小説に載っていた偏った知識をふと思い出す。
そのまま、ちろちろと彼女の小さな赤い果実に舌を這わせる。
「あ…舐めちゃだめ…」
「なんで、だよ?」
「も、もう…のいじわる…」
二人でくすくす、と笑いあうと、は彼女のパンツに手をかけた。

「あ、ちょっと待って…」
「待たない。」
「あ、きゃあっ!!」
一気に腿のところまでパンツを下ろすと、銀糸が引いているのに、は気付いた。
「カノンノ、濡れてる…」
「言っちゃいや…」
そして、彼女の秘所に目をやると、はゴクリ、と息を飲んだ。
薄く生えた桃色の陰毛。そして、少し濡れてテカっている、まだ誰も受け入れたことがないであろうその秘所は、とても綺麗だった。
「指、いれるぞ?」
「ぇ…」
ずぶ、ずぶぅ…いやらしい音を立て、ゆっくりカノンノの中にの指が入っていく。
ッ…」
カノンノは、の首に細腕を回した。
狭過ぎる処女(おとめ)の秘所をかき混ぜ、少しずつ解していく。
それと同時に、カノンノから甲高い嬌声が上がる。
「カノンノ、気持ちいい?」
が愛撫を続けながら訪ねると、快感のあまり舌がうまく回らないようで、コクコクと彼女はうなづいた。
「あ、ああああ!」
が、カノンノのもはやむき出しになった花の種を、ぐっと押すと、ひときわ高い嬌声が上がる。
彼女はがくがくと震え、力なくぐったりとした。
「カノンノ…」
…」
二人は少し、見つめあう。

そして、ゆっくりとはカノンノの膣に、自らの分身を押し進めた。
ぶち。
何かが切れる音がした。
カノンノの…純白の証だ。
「カノンノ…大丈夫か?」
「大丈夫……平気だよ…。」
健気に痛みをこらえるカノンノに、は申し訳ない気分になった。
(早く終わらせないと…)
「カノンノ…時期に良くなるはずだから、我慢してくれ。」
カノンノの指に自分の手を絡ませ、少し荒々しく腰を動かす。
…!!!」
カノンノは、悲鳴とも嬌声とも聞こえる声で、叫ぶ。
上下に、左右に。
愛撫するたびに、彼女の中から愛液はとどまることを知らないかのように溢れ、は愛撫のスピードを上げた。
「あ、あん!気持ち、いいのぉ!ー!!」
完全に痛みが引いたらしいカノンノは目を潤ませて、に抱きつく。
カノンノそれは、ぎゅうぎゅうとの分身を締め付け、もまた、強い快感を感じていた。
そして、限界だった。
「カノンノ、で、出るッ!」
「あ、あぁ…!出してッ、おねがいっ」
「…くっ、カノンノ!!」

勢い良く、カノンノの中で精は放たれ、カノンノは光悦とした表情で、
「出てる…のが…」
と、嬉しそうに呟いていた。




気が付くと、は一人でカノンノの部屋で寝ていた。
「あれ、…。」
きょろきょろと見回すが、カノンノはおらず、代わりに少し丸い字で書かれた手紙が見つかった。




ありがとう。
のおかげで、最後の勇気が出たの。
私、記憶を取り戻しても、絶対が好きからね。
絶対。
だから、も私のこと好きでいて、欲しいって言うのはわがままかな?

先に、ハロルドさんのところに行っています。

カノンノ



「カノンノ…」
は、そっと目を伏せた。
「好きに、決まってるって言っただろ…。」





その後、カノンノは行方をくらました。


















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